日々徒然

2019年10月24日

弁護士 入江秀子が日々の雑感や感じたことなどを綴って参ります。

 

子との面会交流は難しい問題だと思います。


基本的には、

「子どもは、夫婦間の争いとは関係なく、親子の縁は切れないから、非同居親(非親権者)にも会わせましょう」
というのが一般論です。


裁判所もこの立場で、面会を実施できない理由があるのであれば、それを取り除くべく協議しましょう、という立場です。
また、各種のVTRも作成して、双方の親を啓蒙し、理想的な面会交流の実現に励んでします。

 

確かに、何も問題がない多くの案件においては、もっともだと思います。


何といっても実の親子です。
子どもの人生の悩み事に親身に相談に乗れる貴重な一人です。


更に、面会交流により親子関係が充実していれば、人生の選択(大学進学や、資格取得のための投資など)において、
非同居親(非親権者)からの経済的支援を得ることもできます。

 

このような場合であれば、夫婦間の紛争中に、一時の感情に左右されずに大局的に物事を見て、面会を実施しておくのは
子どものために大事なことだと思います。

 

 

しかし、必ずしもそうではない案件も多数存在します。


子ども自身が、非同居親(非親権者)と会うことを拒否している場合です。


このような主張を同居親がすると、非同居親からは、「それは子供の真意ではない、同居親が言わせていることだ」との反論が必ずありますが、


最近の裁判所では、同居親がこのような主張をすれば、調停委員や調査官からかなり追及を受けていますから、
調停が係属しているのに、恣意的に子どもに面会を拒否させていることは、非常にレアなケースだと思われます。


難しいのは、面会を好ましく思わない同居親の感情が子どもに伝わり、これを子どもが忖度してしまう場合でしょう。


ただ、そのような場合は、家庭裁判所の調査官が加わることにより、子どもの心情を分析して調整していくことになるでしょう。

 

このように、面会案件において、同居親は、様々な調整を求められて負担が大きいですが、
非同居親も、ただ単に面会を求めるばかりでは前に進まないでしょう。


同居親との信頼関係を築くことが大切だと思います。


双方の意見や価値観が食い違ったので、別居や離婚になったのですから、それは容易ではないと思いますが、
まずは、自分本位に判断せず、同居している親の教育方針や意向を尊重する、との姿勢を心がけてはどうでしょうか。


また、同居親とした約束は、きちんと守ることも重要になってくるでしょう。


「親なのだから子どもと会えて当然」「面会は親の権利」と考えていると、面会の実現が厳しいでしょう。

 


仮に、「同居親が会わせたくないだけだ」と考えるのであれば、同居親にそのようにさせてしまった原因を振り返ることも大切だと思います。


相手に求めるばかりではなく、自分は何ができるかを考えることも、面会案件では大切になってくるでしょう。

これは、双方が共にすべき努力であって、片方でもその努力を怠れば、面会が実現できない場合も少なからずあります。


本当に、本当に残念な結果ですが。

なお、子どもが中学生以上になってくると、徐々に子どもの意思が尊重される割合が大きくなります。


この場合、別居前に子どもと非同居親が直接関わり合っている期間も長いですから、
子どもが面会を拒否している場合は、非同居親は、同居期間中の親子関係を省みるべきでしょう。


成人であれば、人は会いたくない人と会うことを強要されないのですから。

 

紛争が長期化している面会案件でふと思うのは、
その紛争自体が、「子の福祉」を阻害しているのではないか、との疑問です。


面会を求める方は、「子の福祉」のために非同居親と面会すべきと主張しますが、
その実施の是非でこれだけ揉めること自体、子どもにとっては大きな負担だと思うのです。


ある程度のところで保留とし、子どもの成長を待つのも解決方法だと思います。

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