日々徒然
2019年12月12日
弁護士 入江秀子が日々の雑感や感じたことなどを綴って参ります。
最高裁判所が、この程、民事裁判のIT化の一環として、
「ウェブ会議」(裁判所と弁護士事務所などをインターネットで繋いで遣り取りすること)を導入すると発表しました。
開始時期は、来年2月3日からで、
まずは、東京、札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、高松、福岡の各地方裁判所と知財高裁(東京)
において導入を始めるそうです。
今までも、「電話会議システム」による弁論準備手続き という制度はありましたが、
この制度は、当事者(原告・被告)のどちらか片方は裁判所に出頭する必要がありました。
今回導入される「ウェブ会議」は、当事者が両方とも裁判所に出頭しなくても良いとの利点があります。
従来の電話会議システムは、私も何度か利用したことがあります。
往復何時間もかけて遠方の裁判所に行くよりも便利ではありましたが、
裁判官が現段階でどのような心証を形成しているかを読み取るのが難しく、
また、こちらの微妙なニュアンスを伝えにくいなどの難点もありました。
「ウェブ会議」では、端末のカメラで顔を見ながら意思疎通を図ったり、
資料を同時に閲覧したりできるようになる
ということですから、電話会議システムよりは上記の点が改善されるのでしょうか。
また、当事者や代理人弁護士などが裁判所に出頭しなくても期日が進められるので、
裁判の迅速化が期待できるのでしょう。
なお、はじめに、「民事裁判のIT化の一環として」と書きましたが、
政府(法務省や消費者庁が中心)では、民事裁判の訴状や準備書面をネットで提出できるようにするなど、
手続きを全面的にIT化するよう、法律の改正を前提にして検討を進めているようです。
私が司法研修所を出て裁判官に任官した時(約25年前)、
地方裁判所の裁判長クラスの年配の方は、手書きで判決を起案し、職員のタイピストが和文タイプに浄書していました。
新任判事補には、富士通のワープロが一人一台貸与されましたが、2年後には一斉にパソコンに入れ替わりました。
次に、準備書面や書証をFAXで提出することが可能になり、この時は、とても画期的だと喜びました。
電話会議システムの導入も、当時は利便性の向上と歓迎されました。
時代は、急速に進んで来ましたね。
他方、ハッキング、サイバーテロ、情報流出など、
ネットであるがために生じる危険も忘れてはならないと思います。
裁判という、人の権利関係を決定する過程に、ネットゆえの不正等が入り込まないよう、
利便性を求めつつも、慎重なシステム整備が必要になるのではないかと思います。